
はじめに
「自分が亡くなった後、葬儀や納骨は誰がしてくれるのだろう」
「病院や施設への対応、行政手続き、自宅の整理はどうなるのだろう」
「預貯金や不動産の手続きは、誰に任せればよいのだろう」
近年、このような将来への不安を抱え、司法書士へ相談される高齢者の方が増えています。
以前であれば、亡くなった後に必要となる手続きは、配偶者や子どもなど家族が中心となって行うことが一般的でした。
しかし、社会環境の変化により、
・未婚の方
・子どものいない方
・親族が遠方に住んでいる方
・兄弟姉妹や甥姪とは疎遠になっている方
・親族に負担をかけたくないと考えている方
が増えています。
このような方にとって問題となるのは、「相続人がいるかどうか」だけではありません。
法律上の親族が存在していても、実際に亡くなった後の手続きをお願いできる関係性にあるのか、遠方から対応できる状況なのかという問題があります。
つまり、現代社会では「家族がいるか」ではなく、「自分の意思に基づいて、必要な手続きを担ってくれる人を準備しているか」が重要になっています。
今回ご紹介するのは、夫や子どもがおらず、婚姻歴もない80代女性からいただいたご相談事例です。
ご本人はお一人で生活されていましたが、将来について真剣に考え、
「自分の最後は、自分の意思で準備しておきたい」
というお気持ちから、当事務所へご相談いただきました。
80代女性が抱えていた「亡くなった後」への不安
今回のご相談者様には、お姉様がお一人いらっしゃいました。
しかし、お姉様は結婚後に単身でアメリカへ渡られており、現在、日本国内に日常的に頼ることのできる親族はいない状況でした。
ここで重要なのは、「親族が存在すること」と「実際に死後の手続きを依頼できること」は異なるという点です。
例えば、ご本人がお亡くなりになった場合、短期間のうちに以下のような手続きが必要になります。
・死亡届等の行政手続き
・医療機関や介護施設への連絡
・遺体の引き取り
・葬儀、火葬、納骨の手配
・葬儀費用の支払い
・賃貸住宅の解約
・公共料金や各種契約の終了
・家財道具や遺品の整理
・金融機関の預貯金解約
これらは、本人が亡くなった後、誰かが必ず対応しなければならない手続きです。
しかし、本人が亡くなられた後では、
「本当はどのような葬儀を希望していたのか」
「どのように財産を整理してほしかったのか」
を確認することはできません。
そのため、判断能力が十分にある生前の段階で、自分自身の希望を整理しておくことが大切になります。
死後事務委任契約とは
ご相談者様は、将来の不安を解消する方法として「死後事務委任契約」を選択されました。
死後事務委任契約とは、本人が生前に第三者へ依頼し、自身が亡くなった後に発生する事務手続きを行ってもらうための契約です。
一般的な委任契約は、委任者の死亡によって終了することが原則です。
しかし、死後事務委任契約では、本人の死亡後に必要となる一定の事務について、あらかじめ契約内容を定めておくことで、本人の意思に沿った対応を可能にします。
死後事務委任契約で依頼できる内容には、例えば以下のようなものがあります。
葬儀・納骨に関する事務
・葬儀会社への連絡
・火葬、納骨手続き
・葬儀費用の支払い
・寺院や墓地管理者との連絡
住居や生活関係の整理
・賃貸借契約の解約
・公共料金の停止
・携帯電話、インターネット契約の解約
・施設利用料等の精算
行政・関係機関への対応
・死亡届に関する手続き
・年金関係手続き
・医療機関や施設への連絡
遺品整理に関する対応
・家財整理業者の手配
・住居明渡し
・残置物処分に関する手続き
死後事務委任契約の目的は、「亡くなった後に必要となる事務手続きを確実に行う体制を作ること」です。
ただし、死後事務委任契約で対応できる内容や方法は、契約内容、財産状況、親族関係、関係機関の運用などによって異なります。そのため、実際には事前に希望内容を整理し、必要な手続きが実行できる形で契約を作成しておくことが大切です。
死後事務委任契約と遺言は役割が異なります
ここで注意が必要なのは、死後事務委任契約だけでは財産の承継について決めることはできないという点です。
死後事務委任契約は、
「亡くなった後の手続きを誰に任せるか」
を決めるものです。
一方、遺言は、
「自分の財産を誰に承継させるか」
を決めるものです。
例えば、
・預貯金
・不動産
・有価証券
・その他の財産
を誰に残すのかについては、遺言による意思表示が必要になります。
今回のご相談者様も、死後事務委任契約とあわせて遺言書を作成されました。
遺言では、
「姉の子である姪へ全財産を承継させる」
という明確な意思を残されました。
ご本人が希望する方へ確実に財産を承継させるためには、遺言による準備が非常に重要です。
遺言執行者を司法書士に指定する意味
今回の遺言では、当事務所の司法書士を遺言執行者として指定されました。
遺言執行者とは、相続開始後に遺言の内容を実現するため、必要な手続きを行う者です。
遺言執行者は、単に書類を渡すだけの役割ではありません。
実際には、
・戸籍等の収集
・相続関係の確認
・財産調査
・金融機関への解約請求
・不動産相続登記
・財産の換価
・受遺者への財産交付
など、多くの専門的な手続きを行います。
特に、おひとりさまの場合、相続人となる親族が遠方にいるケースや、長期間交流がないケースもあります。
そのような場合、専門家を遺言執行者として指定しておくことで、相続手続きを円滑に進めることができます。
ご逝去後、死後事務委任契約と遺言執行を開始
その後、年月が経過し、ご相談者様がお亡くなりになりました。
生前に締結していた契約内容に基づき、当事務所では速やかに手続きを開始しました。
まず、葬儀会社から連絡を受け、葬儀に関する調整、費用支払い等の対応を行いました。
また、作成されていた遺言書は自筆証書遺言であったため、家庭裁判所へ検認申立てを行いました。
自筆証書遺言の場合、法務局による保管制度を利用している場合を除き、原則として家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
検認完了後、正式に遺言執行者として財産承継手続きを開始しました。
財産調査から遺産承継まで一括対応
その後、
・金融機関の預貯金調査
・預貯金解約手続き
・公共料金等の精算
・賃貸借契約の解約
・住居整理
を進めました。
すべての財産を確認したうえで、遺言内容に従い、残された財産を姪の方へ交付しました。
結果として、ご本人が生前に希望されていた内容を実現し、すべての手続きを完了することができました。
生前対策は「自分の安心」と「残される人への配慮」
今回のケースでは、
・死後事務委任契約
・遺言書作成
・遺言執行者の指定
という3つの準備を行っていました。
この準備があったことで、ご逝去後に発生する手続きを、ご本人の意思に沿って進めることができました。
生前対策とは、自分自身が安心して老後を過ごすためだけではありません。
残される家族や親族に、判断や負担を残さないための大切な準備でもあります。
まとめ
人生の最後に必要となる手続きは、葬儀だけではありません。
亡くなった後には、
・行政手続き
・住居整理
・財産整理
・相続手続き
など、多くの実務が発生します。
特に、
・おひとりさまの方
・子どものいない方
・親族が遠方にいる方
・身近に頼れる人がいない方
にとって、生前対策は非常に重要です。
当事務所では、
◇遺言書作成
◇死後事務委任契約
◇遺言執行
◇相続手続き
について、生前からご逝去後まで一貫したサポートを行っています。
「自分が亡くなった後が心配」
「誰に何を頼めばよいかわからない」
そのような不安を感じた段階で、まずはお気軽にご相談ください。
当事務所では、司法書士法人ファーストNiと一般社団法人ファーストらいふサポートが連携し、生前のご相談から死後事務、遺言執行、相続手続きまでサポートしています。一般社団法人ファーストらいふサポートについては下記をご参照ください。
公的機関の参考ページ
知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方(政府広報オンライン)

司法書士法人ファーストNiは、岡山県を中心に活動する司法書士事務所です。不動産・会社関係・高齢者問題など複雑多岐に渡るお客様のご要望にワンストップで対応させていただきます。


