
「父名義の不動産があります。しかし、父は外国籍でした。この場合でも相続登記はできますか?」
今回は、このようなご相談をいただいた50代男性の相続登記について、実際の相談事例をもとにご紹介します。
相続登記というと、「亡くなった方の戸籍を集めて、相続人で話し合えば手続きできるもの」と考えられている方も多いかもしれません。
しかし、被相続人(亡くなられた方)や相続人が外国籍である場合、一般的な日本人同士の相続とは異なる確認事項が発生します。
特に、
・亡くなった方の相続について、どの国の法律が適用されるのか
・相続人をどのような資料で証明するのか
・外国で発行された書類をどのように取り扱うのか
・日本の法務局が求める資料をどのように準備するのか
など、専門的な判断が必要になるケースがあります。
今回のご相談では、ご両親ともに外国籍でありましたが、相談者様は帰化され日本国籍でした。
また、お父さまの相続手続きを進める前に、お母さまも亡くなられたため、「数次相続」という複雑な状況になっていました。
外国籍の方でも不動産の相続登記は可能です
まず大切なことは、「外国籍の方が所有していた不動産でも、相続登記は可能である」ということです。
外国籍であることだけを理由として、日本国内の不動産を相続できないということはありません。
日本国内にある土地や建物については、不動産登記制度に基づいて名義変更の手続きを行うことになります。
ただし、問題となるのは「誰が相続人なのか」という点です。
日本国籍の方が亡くなられた場合には、通常、戸籍を出生から死亡まで取得することで、親族関係を確認します。
一方、外国籍の方の場合、日本の戸籍制度が存在しないため、同じ方法で相続関係を確認することができません。
そのため、亡くなられた方の本国で発行された身分関係を証明する書類などを確認しながら、相続人を確定していく必要があります。
外国籍の相続で重要となる「相続人の確定」
相続手続きで最も重要な作業の一つが、「誰が相続人なのかを確定すること」です。
相続人が確定しなければ、
・遺産分割協議を行うことができない
・相続登記を申請することができない
・金融機関の解約手続きなども進められない
という状況になります。
今回のケースでは、ご両親とも外国籍であったため、日本の戸籍だけでは家族関係を確認することができませんでした。
ご相談者様は、大使館を通じて外国の身分関係資料を取得されていました。
しかし、取得された資料だけでは、相続関係を完全に確認するには不足する部分がありました。
外国の制度は日本と大きく異なるため、「どの書類が出生・婚姻・親子関係を証明するものなのか」を読み解く必要があります。
また、外国で発行された書類については、翻訳の準備が必要になる場合もあります。
数次相続が発生した場合の注意点
今回の案件で特に重要だったのが、「数次相続」です。
数次相続とは、最初に発生した相続の手続きが完了する前に、その相続人が亡くなり、さらに次の相続が発生することをいいます。
例えば、
父親が死亡
↓
父親の相続人として母親と子どもが相続人となる
↓
その後、母親も死亡
という場合、父親の相続だけではなく、母親の相続についても整理する必要があります。
今回のケースでも、お父さまの相続手続きを進める前にお母さまが亡くなられていたため、
① お父さまの相続関係
② お母さまの相続関係
を順番に確認する必要がありました。
一つでも相続関係の確認を誤ると、後から相続人が判明し、手続きのやり直しが必要になる可能性があります。
そのため、外国籍の方が関係する数次相続では、より慎重な調査が求められます。
外国の書類だけでは足りない場合の対応
外国籍の方の相続では、「必要な書類を集めれば終わり」という単純なものではありません。
取得できる資料は国によって異なります。
日本の戸籍のように、
・出生
・婚姻
・離婚
・子どもの出生
・死亡
などが一つの制度で管理されている国もあれば、複数の証明書を組み合わせなければ家族関係を確認できない国もあります。
そのため、実際の相続登記では、
「この資料で親子関係を証明できるのか」
「相続人全員を確認できているのか」
「法務局へどのように説明するのか」
という点が重要になります。
今回のケースでは、当事務所において取得済み資料を確認し、必要な補足資料を準備しました。
そして、法務局とも事前に確認を行いながら、相続関係を整理していきました。
法務局との事前調整が重要になるケース
通常の相続登記であれば、必要な戸籍等を添付して申請することで手続きが進みます。
しかし、外国籍の方が関係する相続では、提出する資料について法務局と事前に確認しておくことが重要になります。
「この資料で相続人を証明できるのか」
「追加資料が必要なのか」
という点を事前に確認することが必要になってきます。
今回も、当事務所では相続関係を整理したうえで法務局と調整を行いました。
その結果、ご相談者様である長男様と長女様のお二人が相続人であることを確認し、無事に不動産の相続登記を完了することができました。
帰化された方の相続でも確認が必要です
今回のご相談者様は、現在は日本国籍を取得されていました。
しかし、相続手続きでは「現在の国籍」だけではなく、親族関係や過去の身分関係を確認することが重要です。
例えば、
・親が外国籍だった
・自分は帰化して日本国籍になった
・外国に出生や婚姻に関する記録がある
という場合には、日本の戸籍だけでは確認できない情報が存在することがあります。
相続手続きでは、現在の国籍だけを見るのではなく、亡くなられた方との家族関係を正確に確認する必要があります。
外国籍の方の相続でお困りの方へ
外国籍の方が関係する相続では、
「どの書類を集めればよいのか分からない」
「大使館から取得した書類だけで足りるのか不安」
「相続人が誰になるのか判断できない」
「何年も前の外国の記録を確認できない」
といったご相談を多くいただきます。
しかし、必要な資料を一つずつ確認し、現在の状況に応じた方法で整理することで、相続手続きを進めることは可能です。
特に、不動産については相続登記をしないまま長期間経過すると、さらに相続人が増える「二次相続」「三次相続」となり、手続きがより複雑になる可能性があります。
外国籍の方が所有していた不動産がある場合には、早めに現在の相続関係を確認しておくことが大切です。
まとめ
外国籍の方が亡くなられた場合でも、日本国内の不動産について相続登記を行うことは可能です。
ただし、日本人同士の相続とは異なり、外国の身分関係資料の確認や、相続関係の整理など、専門的な対応が必要になる場合があります。
今回の事例でも、外国籍のご両親の相続、さらに数次相続という複雑な状況でしたが、資料の確認と法務局との調整を行うことで、無事に相続登記を完了することができました。
「父や母が外国籍だったけれど、不動産の相続はできるのだろうか」
そのような不安をお持ちの方も、まずはお気軽にご相談ください。
相続関係や必要書類を確認し、現在の状況に応じた最適な手続きをご提案いたします。

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