遺贈と死因贈与の違いとは?司法書士がわかりやすく解説【相続・生前対策】

相続

「この財産は、この人に残したい」
その想いを実現する方法をご存じですか?

「自宅は長年お世話になった姪に残したい。」
「子どもはいないので、介護をしてくれた親族へ財産を渡したい。」
「長年支えてくれた友人へ感謝の気持ちとして財産を残したい。」

このように、「法定相続人ではない人」や「特定の人」に財産を残したいと考える方は少なくありません。

しかし、相続では原則として法律で定められた相続人が財産を引き継ぐことになります。そのため、ご自身の希望どおりに財産を渡したい場合には、生前に準備をしておくことが大切です。

その方法として代表的なのが、

•遺言による「遺贈」
•契約による「死因贈与」

です。

どちらも「亡くなった後に財産を渡す」という点では似ていますが、法律上の仕組みや特徴は大きく異なります。

今回は、この2つの制度の違いについて、できるだけわかりやすくご紹介します。

まずは違いを簡単にいうと…

両者の違いを一言で表すと、次のようになります。

死因贈与は「相手と約束しておく方法」

遺贈は「遺言書で意思を残す方法」

たったこれだけの違いのようにも思えますが、この違いによって必要な手続きや注意点も変わってきます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

死因贈与とは?~「契約」で財産を渡す方法~

死因贈与とは、

「私が亡くなったら、この土地をあなたにあげます。」

「ありがとうございます。その内容でお受けします。」

というように、生前に当事者同士で約束を交わしておく制度です。

つまり、死因贈与は契約です。

契約である以上、一人だけで決めることはできません。

財産を渡す人だけでなく、受け取る人の同意があって初めて成立します。

そのため、お互いが内容を理解し、納得した上で契約を結ぶことになります。

例えば、

•子どもがいない夫婦が、お世話になった甥へ自宅を残したい
•長年介護をしてくれた親族へ土地を渡したい
•事業を支えてくれた親族へ財産を承継させたい

このようなケースで利用されることがあります。

遺贈とは?~遺言書によって財産を残す方法~

一方、遺贈は遺言書によって財産を渡す制度です。

例えば、

「自宅を長男へ遺贈する。」

「預貯金の一部を孫へ遺贈する。」

「○○団体へ寄付する。」

といった内容を遺言書へ記載しておくことで、亡くなった後にその意思を実現することができます。

遺贈は契約ではありません。

そのため、相手に事前の承諾を得ておく必要はなく、ご本人の意思だけで内容を決められることが特徴です。

また、財産を渡す相手は個人だけではありません。

親族以外の方や、公益法人、学校法人、社会福祉法人、NPO法人などへ財産を遺贈することも可能です。

「自分が築いた財産を社会のために役立ててほしい」という想いを形にできる制度でもあります。

死因贈与と遺贈、それぞれのメリット

死因贈与のメリット

死因贈与の一番の特徴は、「事前に相手と話し合えること」です。

契約ですので、お互いが内容を理解した上で約束を交わします。

そのため、

「本当に受け取ってもらえるだろうか」

「相手は困らないだろうか」

といった不安を、生前に解消できる場合があります。

また、双方が内容を確認しているため、亡くなった後に「そんな話は聞いていない」といった誤解が生じにくいという面もあります。

遺贈のメリット

遺贈は、ご本人だけで準備を進められることが大きなメリットです。

相手へ事前に伝えなくても遺言書を作成できますので、

「まだ本人には話したくない」

「内容を変更する可能性がある」

という場合にも利用しやすい制度です。

また、個人だけでなく団体などへ財産を残せるため、ご自身の希望を幅広く実現しやすい点も魅力です。

デメリットや注意点も知っておきましょう

死因贈与の注意点

死因贈与は契約ですので、相手の同意が必要になります。

また、契約内容があいまいだったり、書面に残していなかったりすると、後になって「言った・言わない」のトラブルにつながることがあります。

特に不動産が含まれる場合は、登記や税金なども関係してきますので、契約内容を慎重に検討することが大切です。

遺贈の注意点

遺贈では、遺言書そのものが法律上の方式を満たしていなければ無効になる可能性があります。

例えば、

•日付がない
•署名がない
•内容が不明確

などの場合には、せっかくの意思が実現できないおそれがあります。

また、「土地をあげる」とだけ書かれているなど、対象となる財産が曖昧だと、相続手続きがスムーズに進まないこともあります。

遺言書はご自身で作成することも可能ですが、内容や書き方について専門家へ相談しながら進めることで、より安心につながります。

どちらを選べばよいのでしょうか?

では、「遺贈」と「死因贈与」はどちらを選べばよいのでしょうか。

実は、「こちらが絶対によい」という答えはありません。

例えば、

「相手と十分に話し合い、お互い納得した上で準備しておきたい」

という場合には、死因贈与が向いていることがあります。

一方で、

「自分の意思として財産の行き先を決めておきたい」

「まだ相手には伝えず準備したい」

という場合には、遺贈の方が適していることもあります。

さらに、

•渡したい財産が不動産なのか預貯金なのか
•相続人との関係
•遺留分への配慮が必要か
•相手が親族なのか第三者なのか
•将来的に内容を変更する可能性があるか

など、さまざまな事情によって適した方法は変わります。

制度だけを比較して判断するのではなく、ご自身の状況に合わせて検討することが大切です。

「想い」を確実に形にするために

「この人に財産を残したい。」

その想いがあっても、適切な準備をしていなければ、希望どおりに実現できないことがあります。

遺贈も死因贈与も、それぞれ目的や特徴が異なる制度です。

どちらを選ぶかだけでなく、内容の決め方や書類の作成方法によっても、将来の手続きが大きく変わることがあります。

大切なのは、ご自身やご家族の状況に合った方法を選び、法的に有効な形で準備をしておくことです。

まとめ

「亡くなった後に財産を特定の人へ渡したい」という想いを実現する方法には、「遺贈」と「死因贈与」があります。

死因贈与は、相手と約束を交わしておく契約です。

一方、遺贈は、ご本人の意思を遺言書に残して実現する方法です。

どちらにもメリット・デメリットがあり、適した方法はご家族の状況や財産の内容によって異なります。

当事務所では、遺言書の作成支援をはじめ、生前対策や相続に関するご相談を承っております。

「自分の場合はどちらが合っているのだろう?」
「子どもがいない場合はどうしたらいい?」
「不動産を希望どおりに引き継いでもらうには?」

このようなお悩みがございましたら、お一人で悩まず、お気軽に当事務所までご相談ください。

ご本人の想いを大切にしながら、ご家族にとっても安心できる生前対策をご提案いたします。